黄昏の出会い
…しかし、主様はお仕事とプライベート以外、変装しなければならない。



主様自身も、幼少からそう育てられた。




主様の本当のお姿を知る者は、バレてしまったと言う氷室さんを含め、かなり少ない。




元々、主様の変装は妖怪達から身を守る為に霊力を隠すもの。



妖怪退治が出来るようになった今、もう変装は必要ないと思いますが………




『静夜が男共の餌食になってしまう!!』


と、ご当主の方針により、主様の変装は続いているのです。



……確かに、その可能性は否定できないので、私もヒヤヒヤしているのです。




主様自身も、変装を解く気はないようなので、基本的に主様は本来のお姿を世間に見せないのです。



バタバタバタ……!!



バァンッ!!





「沙那ーーっ!!」




「…えっ!?
主様、如何なされました!?」




物思いにふけていた所を突然主様が出てきました。




仮眠していた筈なのに、主様は仕事着である黒い袴姿。




「妖怪の気配がする!今すぐ呪具を!!」



「え…えぇ!?
し…しかし、まだ霊符しか……!!」



「十分だ。
……行ってくる!!」



主様は用意した霊符を手にすると同時に、部屋を飛び出しました。




「あ、主様!
お気を付けて--」



見送ろうと慌てて追うも、既に外に出たようで、玄関の扉が開いていました。





「主様……
ご武運を……。」




使命に行かれた主様の安否を祈り、扉を閉めた。



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