僕のすべてを、丸ごとぜんぶ。
「ねえねえ、宮藤さんってさ、どんな子?」
休憩時間、席が近い女の子に聞いてみる。
「え、すずな?んー、美人だし容量良いし、良い子だよ?人当たり良いし気取ってるってわけでもないし。なになに、奏はすずな狙いなのー?面白くなーい。」
「そうじゃないよ、僕はみんなのものでしょ?」
「自分で言うなっつの。」
女の子は笑いながら僕を小突く。
…クラスメイトと距離を置いてる、って訳でもなさそうだ。むしろ、同性にも評判が良い辺り、うまく立ち回っていると言うことだろう。
確かに宮藤さんは美人だ。とびきり目立つ華やかさはないけれど、正統派清純派な雰囲気を持っている。
男子に聞いても、同じような評判だった。
…どうしてわざわざ、ややこしい人と関係を持つのだろう。
僕は、面倒くさいことが一番嫌いだ。周りと上手くやっていきたいし、友達となると尚更だ。なのに、わざわざ友達の彼氏に手を出すなんて、僕には想像を絶する行為だ。ありえない。
宮藤さんは美人だ。
それなりにモテるはずだ。
なのに、どうして。
僕にはさっぱり解らない。
いくら華奢な背中を見ても、理解するどころか、不可解さが深まっていくばかりだ。