僕のすべてを、丸ごとぜんぶ。
「そういえば、すずなと霞沢くん、おんなじクラスだったよね?すずな、知らない?」
本田さんがあたりをきょろきょろと見回しながら僕に尋ねる。
「んー、ごめんね、分かんないや。僕は宮藤さんに嫌われてるっぽいし。」
苦笑いしながら言うと、本田さんは不思議そうに僕を覗き込む。
「…すずな、よっぽど親しい人じゃないと素見せたりしないのに。そつなく対応するのに。霞沢くんには、おんなじ空気を感じるのかな。」
そう言って、少しだけ悪戯っぽく笑った。
そのあと、じゃあまたね霞沢くん、と、本田さんは手をひらりと振って、うさぎのように駆けて行ってしまった。
本田さんとは、相当仲が良いらしい。
親しい人じゃないと素を見せない。
そういう意味では、さっき本田さんの言った通り、僕と彼女は同じところにいるのかもしれない。
優しいのが僕のポリシーではあるけれど、艶やかな仮面ほど、剥ぎ取ってやりたくなる。
優等生の仮面の下には、どんな表情が隠れているのか、知りたくなるのが人間の性だ…―――。