僕のすべてを、丸ごとぜんぶ。
「女の子!?女の子!?」
男子の声が教室に響き渡る。
…や、ごめんね、全然可愛くないヤローです。
心の中で、僕は苦笑する。
「まぁ入ってきてもらうかな。霞沢、入ってきていいぞー。」
…その声と共に、僕は教室の扉に手をかけた。
…そう、僕は巷でいう所の『転校生』。
父さんの仕事の関係で、高校3年の春、この学校に転校することになった。
息をのむクラスメイト。
品定めをするかのような視線が、僕に突き刺さる。
教壇に立つ原先生の隣に、僕は静かに並んだ。
「霞沢、自己紹介でもするか?」
原先生に促されて、僕はドラマのワンシーンのように、黒板に名前を書いた。
「霞沢奏(かすみざわそう)です。よろしくお願いします。…ヤローでごめんなさい。」
僕がにこりと笑って言うと、一瞬の沈黙の後…
どっと笑いが起きた。
「まぁ、かわい子ちゃんを期待したヤローどもはドンマイだが、仲良くしてやれよー!」
原先生のそんなフォローもあったおかげで、滑り出しは順調に進んだ。
「霞沢の席はあそこな、一番後ろの端。」
原先生に言われた席に、小さく息を吐き出しながら向かった。