僕のすべてを、丸ごとぜんぶ。
一番後ろの、窓側の席。
この町は港町だから、海がよく見渡せる。
…眺めは最高だ。
隣は…
爽やかな顔立ちの男子。
バスケとかサッカーが似合いそうだな。
勝手にそんなことを考えていると、相手が不意にこちらを向いた。
「よろしくな、奏!俺は睦月、更冷睦月(さらさめむつき)。」
屈託のない笑顔を向けて、こちらに右手を差し出す睦月。
…呼び捨てってことは、僕もこのノリでいいのかな。
「分かんないことだらけだし、迷惑かけるかもだけど、よろしくね、睦月。」
にこりと笑って、僕も右手を差し出す。
…睦月となら、上手くやっていけそうだ。
あっさりしてそうだし、爽やかだし。多分…自覚なしにモテるタイプだな。
「…奏?」
黙り込む僕の顔を見て、不思議そうに首をかしげる睦月。
僕はあわてて何でもない、と微笑んだ。
僕には、ついつい人間観察をしてしまうクセがある。
無意識のうちに、あれこれ分析してしまう。