僕のすべてを、丸ごとぜんぶ。
転校して二週間。
この学校にも大分慣れてきた。
高校三年生というのは、けして大人ではないけれど、もう十分、子どもからは卒業している。
わざわざ転校生を外すような真似はしない。
それに、受験を控えているからか、他人に良い意味で興味を示さないのだ。
そういうわけで、僕は思いの外あっさりこのクラスに溶け込んだ。
「奏、図書館の場所は分かる?ごめんな、ついていけなくて。キャプテンの俺が抜けるわけにいかなくて…。」
隣の席から、睦月が心配そうに僕を見る。
「大丈夫だって、小学生じゃないんだから。睦月の心配性。」
からかい半分に、僕は睦月を小突く。
なんだよ、と睦月が僕を小突き返した。
睦月は案の定、サッカー部に所属していた。
それも、キャプテン、という地位のおまけまでついて、僕の予想は当たったんだ。
睦月は面倒見が良くて、お節介。
そして、心配性。
そんな睦月だから、僕はうっかり化けの皮を剥がしそうになる。
「じゃあな。」
睦月がひらりと手を振って、掃除を終えた教室を出ていった。
…どこまでも、嫌みなくらいに爽やかだ。
僕は放課後、図書館に足を運ぶ予定を立てていた。
この学校はそこそこの進学校らしく、図書館で自習する生徒も多いらしい。
クラブにも所属していない僕は暇をもてあまし、図書館に出向いてみようと考えた。