僕のすべてを、丸ごとぜんぶ。



「今日バイトなのにツイてない、この教材返しとけって言われちゃった。」

教室を出る間際、クラスの女の子が重そうな図鑑を手に取りながらため息をついているのが目の端をちらついた。




「宮坂さん、僕図書館に用事あるし、持ってこうか?それにこれ、重そうだし。」

僕が宮坂さんに声をかけると、宮坂さんは一瞬動きを止めた。



「…っ奏くん!や、でも悪いし…。」

はっとしたように、宮坂さんは言葉を紡ぐ。



「バイトなんでしょ?急がないと。今度カフェオレおごってもらうからさ。」

冗談混じりにそう言うと、小川さんがくすりと笑って僕を見た。


「じゃあお願いしようかな。今度私の残りのカフェオレあげるね。」

「残り物とか絶対いらねー。それならない方がマシ!」

「奏くんてばひどー!」



軽い冗談で笑いながら、僕は小川さんから図鑑の返却を仰せつかった。
小川さんと廊下の途中で別れ、僕は図書館を目指した。








「あれ、これ…」

その途中、僕は本の裏に『旧館』と書いてあるのを見つけた。


確か、この学校には図書館のほかに古い書庫があったはずだ。
この本は、その場所に保管されているものなのかもしれない。


学校の案内地図を見てみると、北校舎に確かに『旧館』と書かれた場所が存在している。
北校舎は特別教室が集まっていて、普段はあまり近づかない。
これも、学校を知る良い機会かもしれない。



僕は、旧館を目指すことにした。








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