Oh!
その瞬間、あたしの頭が真っ白になった。

コーヒー色の瞳が、あたしを見つめていた。

たくましい腕が、あたしを抱きしめていた。


その翌日のこと。

「ただいまー」

「おかえりなさい」

当麻が帰ってきたので、あたしは玄関に向かった。

「今日、湯川くんが辞表を出してきたよ」

あたしにカバンを渡すと、当麻は言った。

「湯川さん、辞めるの?」

あたしの質問に、当麻は首を横に振った。

「この不況に次の仕事を探すなんて無理だよって言って、辞表を破り捨てた」

当麻はイタズラっぽく言った後、舌を出した。
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