Oh!
しかし、あたしが動いてもたくましい腕はビクともしない。

「――んんっ…」

「あ…」

当麻の長いまつ毛がピクリと動いた。

コーヒー色の瞳が、ゆっくりとあたしを見る。

「おはよう」

当麻が腕の中にいるあたしを見ると、そう言った。

のん気にあいさつしてる場合じゃない!

「ちょっと…!」

腕の中で抵抗しようとしたあたしに、
「ごめん、離したくない」

ギュッと、抱きしめている腕が強くなった。

「もう少し、安奈のそばにいたいんだ」

「あたしは…離して欲しい!」

彼のたくましい腕をたたいて、あたしは解放を求めた。
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