冬ごもり
「早く塗ったほうがいいだろ。いいからじっとしてろ」

顎を捕まれて半ば強制的に龍へと顔を向けさせられた。

かなり近くで凝視され、顔から火を噴きそう・・・。
恥ずかしくてぎゅっと目を瞑った。


龍を押し返していた腕は恥ずかしさのあまり役目を果たしていない。

この状態だけを見たら
きっと私が龍にキスをせがんでいるように見えるだろう。


そんなことを考えていたらついにリップが唇にふれた。


ゆっくりと丁寧に唇へと塗られていく。

「できた」
龍の声で目を開けるとマジマジと顔を見られていた。

すでに赤かった頬がさらに紅潮したのがわかる。


「しずく、真っ赤」
私の顎を持ったまま龍はおかしそうに笑った。
< 5 / 10 >

この作品をシェア

pagetop