夢を探して。 ==獣使い==






【状態を解析ーー体温 心音 呼吸共に異常なしーー】




気を失って横たわっているみなみに身体を近づける"獣"。
それは………ライオン。

しかし、ただのライオンではない。
それは、銀色。
全てを映す鏡のように。




【ーー生体を分子レベルで反射ーー右斜め15°屈折 直進ーー反射、分岐点の解析を行うーーー解析完了、直進ーーーー生体の深奥に到達、解析を開始】





ライオンが一際強く輝いた。

そのとき、紅の脳裏に音・匂い・映像が流れ込んできた。



深い深い闇の中、重く重厚な優しいモノが"自分"を包み込む。


『我が喰ろうた魂はうまいか?』

『お前はただ、生み続けていれば良いのだ…』

『もう、時の歯車は回り始めてしまった』




ここまでは、少女……みなみも聞くことの出来た言葉。

しかし、紅の獣はみなみの全てを映し出す。
本人は知らなくても…内に潜む存在の記すらも読み取って。



『我は、全ての親ーー。全てを産み、与える者』


ーー与える者?


目を閉じながら、紅は内から聞こえる言葉に耳を傾ける。



『それ故、全ての子の人生を背負う必要があるーー。我が産み出した子の力で、狂ってしまう者もいるだろう。絶望する者もいるだろう』





紅は、次に発せられるみなみの内なる存在の言葉に絶句する。











『本当は、みなみに全てを背負わせたくない。……が、この全てを…"獣"を産み出す我の力を欲する者が現れた…。阻止しようにも、みなみが我の存在を自覚しない内は力を発揮することが出来ない』





"獣"を産むーー。
そんな力を、何のために?
誰が欲しがるというんだ。






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