夢を探して。 ==獣使い==


ーーいや、それ以前に……"獣"を産んでいるのがこの女だと…?
あいつの予知は当たったということか?






紅が思考に沈もうとした、その時。



ーーバンッ




部室の扉が開いた。




紅は、それに振り返らずに問いかける。




「……誰だ」





その問い掛けに答えるのは、綺麗で通る低い声。





「……“獣喰い”」



扉を開き、入ってきた少年ーー松原はそう名乗った。


そこで静かに紅は振り返る。



「……“獣喰い”…?"虚無"ではなく?」



少し見開かれる瞳。




「津川みなみに何をした?」

「質問さ」



二人は短い会話の中でも、お互い攻撃に転じるタイミングを図っている。



「ライオン……。まさか、お前は」


松原が何かに気づいたかのように紅を厳しい目で見据える。


そのあまりにも冷たい眼光に、紅は少し気圧され目を逸らした。




「お前が……"破滅の王"か。なるほど……厄介な力を持っているようだな」



見下すような冷たい表情に、紅は目を細める。






「調子に乗るなよ。俺だってお前と同等の0号。強さは大差ない」

「知ってるさ。俺の"獣"が早くお前を喰らいたいとうずうずしてる」




喰う、という単語に反応した紅が気を引き締め臨戦体勢に入る。

そして紅は落ちていた枯葉を拾い、それをライオンに押し付ける。



「うつせーー他が姿、我らの物に」



その瞬間ライオンは銀から緑に変化し、枯葉はもとの青々とした緑に戻った。



「やはり…厄介な力だ」

「さすが、全ての"獣使い"が恐れる虚無というところか?俺の力をもう理解したと?」


皮肉気に笑む。



「…だいたいな。来るなら来いよ…"獣殺し"の一人として、0号:紅 凍牙を殲滅する」



目を妖しく光らせる松原を見て、紅は距離を取り問いかける。




「"獣殺し"だと?お前は既に捕まっていたのか?」





< 103 / 105 >

この作品をシェア

pagetop