夢を探して。 ==獣使い==
ーーいや、それ以前に……"獣"を産んでいるのがこの女だと…?
あいつの予知は当たったということか?
紅が思考に沈もうとした、その時。
ーーバンッ
部室の扉が開いた。
紅は、それに振り返らずに問いかける。
「……誰だ」
その問い掛けに答えるのは、綺麗で通る低い声。
「……“獣喰い”」
扉を開き、入ってきた少年ーー松原はそう名乗った。
そこで静かに紅は振り返る。
「……“獣喰い”…?"虚無"ではなく?」
少し見開かれる瞳。
「津川みなみに何をした?」
「質問さ」
二人は短い会話の中でも、お互い攻撃に転じるタイミングを図っている。
「ライオン……。まさか、お前は」
松原が何かに気づいたかのように紅を厳しい目で見据える。
そのあまりにも冷たい眼光に、紅は少し気圧され目を逸らした。
「お前が……"破滅の王"か。なるほど……厄介な力を持っているようだな」
見下すような冷たい表情に、紅は目を細める。
「調子に乗るなよ。俺だってお前と同等の0号。強さは大差ない」
「知ってるさ。俺の"獣"が早くお前を喰らいたいとうずうずしてる」
喰う、という単語に反応した紅が気を引き締め臨戦体勢に入る。
そして紅は落ちていた枯葉を拾い、それをライオンに押し付ける。
「うつせーー他が姿、我らの物に」
その瞬間ライオンは銀から緑に変化し、枯葉はもとの青々とした緑に戻った。
「やはり…厄介な力だ」
「さすが、全ての"獣使い"が恐れる虚無というところか?俺の力をもう理解したと?」
皮肉気に笑む。
「…だいたいな。来るなら来いよ…"獣殺し"の一人として、0号:紅 凍牙を殲滅する」
目を妖しく光らせる松原を見て、紅は距離を取り問いかける。
「"獣殺し"だと?お前は既に捕まっていたのか?」