夢を探して。 ==獣使い==
「ちょっと!!みなみ、戻ってくるの遅いとは思ったけど…こんな短時間でどうやって松原くんと仲良くなったのよ!」
「あずさ…痛いって…」
みなみはあずさに苦笑し、揺さぶってくる手を退かそうとした。
しかし、その瞬間ーー。
「……ぅあ…!?」
ぐらりと揺れるみなみの視界。
そして、力なく傾く。
「み、みなみ!?」
後ろに倒れかけたみなみは、床に身体を打ち付ける前に何者かによって支えられた。
突然の身体を包み込む感触に、みなみは驚いて後ろを振り返る。
「紅クン!?」
みなみには、自分を支えた男の正体が分からなかったがあずさが答えを発した。
ーー紅…紅 凍牙…?
確か、学年一の秀才でスポーツ万能。そして校内一のイケメンっていう完璧王子だって噂がある人……?
ぼうっと考えを巡らしていると、紅がゆっくりと口を開いた。
「…大丈夫か?津川」
「……?何で私の名前を…」
紅は、みなみの質問には答えずそのまま抱きかかえる。
いわゆる…お姫様抱っこの状態。
「……なっ、降ろして!」
赤面して喚くみなみ。
それでも紅は無表情で動かない。
すると、紅の後ろから男子が走って来た。
「トーガ!はぁ…はぁ、急にいなくなるなよ!お前足速過ぎ!探すのにどれだけかかったと………って、津川!?」