夢を探して。 ==獣使い==




「ちょっと!!みなみ、戻ってくるの遅いとは思ったけど…こんな短時間でどうやって松原くんと仲良くなったのよ!」


「あずさ…痛いって…」



みなみはあずさに苦笑し、揺さぶってくる手を退かそうとした。
しかし、その瞬間ーー。



「……ぅあ…!?」



ぐらりと揺れるみなみの視界。

そして、力なく傾く。


「み、みなみ!?」




後ろに倒れかけたみなみは、床に身体を打ち付ける前に何者かによって支えられた。

突然の身体を包み込む感触に、みなみは驚いて後ろを振り返る。


「紅クン!?」


みなみには、自分を支えた男の正体が分からなかったがあずさが答えを発した。

ーー紅…紅 凍牙…?
確か、学年一の秀才でスポーツ万能。そして校内一のイケメンっていう完璧王子だって噂がある人……?


ぼうっと考えを巡らしていると、紅がゆっくりと口を開いた。


「…大丈夫か?津川」

「……?何で私の名前を…」


紅は、みなみの質問には答えずそのまま抱きかかえる。
いわゆる…お姫様抱っこの状態。


「……なっ、降ろして!」


赤面して喚くみなみ。

それでも紅は無表情で動かない。



すると、紅の後ろから男子が走って来た。



「トーガ!はぁ…はぁ、急にいなくなるなよ!お前足速過ぎ!探すのにどれだけかかったと………って、津川!?」



< 96 / 105 >

この作品をシェア

pagetop