グランドで死ぬと決めたコーチ
そして、癒されたいという気持ちと、千恵との今後への不安を抱えながら、千恵を車で待っていた。

彼女は、車を見つけると、眩い笑顔で手を振ってくれた。

この笑顔があれば、この先ずっと僕も笑顔になれるかな?

僕も、笑顔で手を振った。

そして、一歩近付くにつれ、千恵の表情が引きつり始める。

車に着く頃には、涙が溢れ出ていた。

「大丈夫?ほんと心配してるんだよ。」

「大丈夫。」

と、言葉をかけながら、井戸端会議中のおばさんたちを気にも止めず抱き合った。

「こうしてると、何もかも忘れて、落ち着けるよ。」

いつまでも、こうして触れていられる距離でいられることを切に願うが…

二人とも、コジャレたイタリアンも好きだが、落ち着いて和食を食べるのが好きなので、そのまま日本庭園のある料理屋へ行った。

正直、これからの治療費の事もあるので、最後の晩餐の気分でお金の事は気にせず好きなものを食べた。

キレイなご馳走と庭に二人とも魅了され、食事の間は病気の話は一切せず楽しんだ。

おそらく千恵の気遣いだろう。
< 21 / 85 >

この作品をシェア

pagetop