これからは…
「それに言わなかった?私は海斗に守られるだけの女にはならないって」

いつまでもこの広い背中に隠れてばかりはいられないから

正々堂々と前を向いてみせる

泣くのは彼の前だけでいい

彼女たちの思う壺になんてなってやるもんか

「私は、海斗の隣を歩いて行くの」

後ろでも前でもない

同じものを見られる隣を歩いて行く

だからとことん信じてみせる

「いつの間にそんなにいい女になったかな」

まったく、これだから困る

口元だけで笑いながら海斗が回された腕を優しくほどく

20センチほどある身長差

そっと顎に手を添えて上を向かせると

「失礼ね、私は最初からいい女よ」

不満そうに見上げるブラウンの瞳は、けれど頬を優しくなでれば嬉しそうに笑う

少しだけ屈んで重ねた唇は、記憶よりも少しだけ甘くて

いつもより深かった
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