これからは…
「別にもういいですよ」

淡々と放ったのは海斗だ

見上げる瞳は、何の感情も宿してはいない

「慣れてますから、こういうやり口には」

こんな経験一度や二度ではない

ただ

「ただ、どんな理由にせよ、立花を巻き込んだことだけは絶対に間違ってた」

他人じゃない、でも巻き込んでほしくない、巻き込まれてはいけない、そういう存在だ

真っ白なまま咲き続けさせると誓った

それをこんなところで踏みつぶされるわけにはいかない

まだまだ乗り越えないといけない壁はたくさんあるのだから

初めて見せた海斗の怒りに、そっと目を伏せる

どうしてこの人は、こうも自分を大切にはしてくれないのだろうか

いつもいつも自分は二の次で

いつもいつもその背に守られる

それが、もどかしくて悔しい

「…私、あなたたちが嫌いです」

口を開いたしるふは、そっと前を見据える
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