これからは…
「それでも、どうしても海斗本人だか黒崎病院次期医院長夫人の座だか知らないけど、それが欲しいっていうんなら正々堂々と真正面からかかってくればいいわ」

権力に頼っている時点でこちらは土俵に上げるつもりなどないのだから

「その時は、私だって真正面からぶつかってみせる。でもね、そう簡単に壊せると思わないでよね」

そんな可愛い女ではない

「って、伝えてくれるかしら。他にももっといるご令嬢さんたちに」

そっちだってすべてをさらけ出す位の覚悟で来てくれなきゃ、話にならないって

「さて、言いたいことは言ったかな」

雰囲気を払しょくするようにパンと手を鳴らしていつも通りの雰囲気で海斗を見上げる

「私の話はこれで終わりなので、続きをやりたかったらどうぞ、黒崎先生」

お先に失礼しますね

ラウンジでお茶でもしてますんで

そう告げて軽やかな足取りで医院長室のドアに向かう

パタン、と閉まるドア

訪れる静寂

その背を見送った海斗が、静かに口もとだけで笑う

「もう一つ」

伝えておいてもらえますか
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