これからは…
「ねえ、海寄っていこうよ」

「海?」

「そ、海」

歩いてから帰ろ

「…却下」

あんな寒いところにわざわざ行くか

「ねえ、海斗君、私彼女。わかる?彼女。大切なかわいい彼女の4か月ぶりのお願いを聞こうとは思わない?」

「全く思わない」

そう言いながらも足先は海辺の方へ向かっていく

口だけで海斗の足取りも大して抵抗はしていない

さざ波の押し寄せる海辺

海斗としるふの始まりの地

寒いのだろうか、海斗が開いている方の手でマフラーを引き上げ、

繋いでいる手ごとコートのポケットにしまう

なんと歩きにくいことか

「しるふ」

マフラーに隠れた海斗の口元からもごもごと声がする

「何」

「帰ったら覚えとけよ」

今度こそ襲う

「ええ!?」

ぎょっとして見上げてくるしるふは、でも少し考えた後

「いいよ。4か月ぶりだもん」

少し頬を赤らめてそうつぶやくのだった
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