これからは…
「あら、お帰りなさい、黒崎先生。これでうちの姫君も寂しそうな顔することがなくなるわね」

海斗の帰還を嬉しそうな笑みで迎えた医局長に

「ご迷惑おかけしました。4か月間、暴れたりしませんでした?」

にっこりと笑みを返した海斗の言葉

なんと失礼なことだろうか

「大丈夫よ。時々左側むいてため息ついてたけれどね」

「医局長!!」

そんなことしませんてば!!

左側

そこにある隣り合った海斗の席

時折目に入るからっぽの席に無意識にため息が漏れていた

けれど、あれは決して

「寂しいとか思ってませんから!たまたま顔がそっちの方向向いてただけです!!」

必死の抗議に隣から深いため息が聞こえて

「墓穴掘ってるぞ」

言い置いて自分の席に向かう海斗の背と満足げな医局長の笑みに

いたたまれなくて自分も海斗の後を追う

腰を下ろしたその隣に、当たり前のように彼がいてくれるだけで

ああ、やっぱりうれしいかもしれないと

そう思って微笑んだ
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