これからは…
ふう、と息をついてからそっとドアに手を当てる

音もなく開いたドアのその先で海斗がこちらに背を向けてマウスを動かしている

ブー

と海斗の携帯が机の上で振動する

ふと視線を移した海斗の瞳が、一瞬細まった、ような気がした

優しさを孕んだ、気がした

携帯を机の上に置いたまま、片手で画面を少しいじった後、

すぐに視線はパソコンの画面に戻ってしまったけど

でも、一瞬だけ、いつもは冷静でほとんど表情を変えない、

海斗の休息を見た気がした

「黒崎先生」

呼びかけに向けられた瞳はいつも通り

「これ、置いておきますね」

テーブルの上にどさりとカルテの山を落とす

「ああ、ご苦労様」

「…黒崎先生」

視線を投げても、それはいつも一方通行

「なんだ」

呼びかけに対する答えすら、視線はパソコンの画面

「飲み、行きませんか」

息抜きに
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