これからは…
久々に言ったこの言葉

「…懲りないな、宮部も」

それ以降何も口にしない

「黒崎先生って、付き合い悪いって言われませんか」

「一匹狼っては言われたことがある」

思い出すのは、あのまっすぐな瞳

あれは、いつもいつも一人でなんでも解決しようとする、してしまう海斗への

怒りの言葉だったけれども

「黒崎先生ほど落ちにくい男って初めてです」

自慢じゃないけどキラーと呼ばれていたことだってあるのに

「俺を落とそうなんて10年早い」

カタリ、と椅子を引いて立ち上がった海斗はICUに向かうようだ

「10年経ったら落ちてくれるってことですか」

それは意外と軽くないか

「10年?…その時にもう一度そう思うならな」

そう言って医局のドアが音もなく開く

見送る背は、今日も揺るぎがなかった
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