これからは…
画面に表示された名前だけで

たった一言で

彼をあんな風に優しい瞳に、笑顔にさせてしまうその向こうの人には

絶対に敵うわけないんだ

どんなんだろう

あんな真面目な人に

冷静で、媚を売らない一匹狼に大切にされるというのは

いいや、たった一人、自分をちゃんと想ってくれる人が隣に居るというのは

一体どれだけ心地いいことだろう

ふ、と小さく息をつく

「…ああ、頼?今日、ごめん。パス」

仕事が終わらなそうでさ

それだけを告げて電話をカバンにしまう

「あー、らしくない」

ホント、らしくない

自棄のみするかー、と歩を進めた先は、真っ白な雪が降り積もっている

その上に小さな足跡を残しながら、でもほんの少しだけ温かな気持ちだった
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