これからは…
「黒崎先生の彼女さんてどんな人ですか」

無言は肯定

何より視線を向けてくることは、拒絶ではない

「…俺は一度も彼女がいるなんて言った覚えはないんだが」

でも、一瞬でうんざりとした光を宿す瞳

「とか言って、ちゃんといるのしってるんですよー。右手薬指に指輪してましたもんねー。しかも私の記憶が正しければ、あれ結構値がするものですよね」

しかもペアでしか売ってないはずです

「無駄に視力がいいんだか、無駄に情報を掴んでいるんだか」

「運がいいって言ってください。私服姿の黒崎先生を見たのは、あれが最初で最後なんですから」

安心してください、誰にも言ってませんから

あんな貴重な情報、みすみす他の看護師に話したりなんてしない

「それはどうも」

まったく感情のこもっていない言葉

「で、どんな彼女さんなんですか?」

「そんなこと聞いてどうするんだ」

視線すら合わせず、段ボールに着々と物を詰めていく

ほとんど本で埋められたそれは、見た目以上に重いのではないかとふと思う
< 83 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop