鉄は熱いうちに撃て!?
マスターは滔々と語りだした。

「あれは、3日前の事、『バリッ! バリッ!』という大きな音が聞こえてきた。
 と、思ったら、非常事態を知らせるサイレンが鳴った。
 まあ、サイレンがなったら自宅待機と決まってるんだが、そんなのは無視無視。俺も店の外の人混みに紛れて外に出たんだ、そしたら……」

「そしたら?」

「無傷な城門と、怖い顔をした兵士がいて、家に返された」

「ガクッ」

「―――俺はあんま、知らないんだ。てへ」

「まあ、そうじゃないかと思ったが」

「ユウカル城に行ってみろよ。王に、アドギル直通のキャラバンだと申請すれば詳しい話を聞けるはずだぞ」

アドギルとは、キャラバン隊の統括所『アドベンチャーズ・ギルド』の通称である。

「わかった。有難う。時間もあるし、行ってみるよ」

俺は、椅子に掛けといた、ショルダーバッグを手に取った。

「お代はここに置いてくぞ。釣はいらない」

立ち上がり、店から出ていく俺を尻目にマスターは

「あっ! あいつ、釣いらねえとかいいながら、ぴったし払っていきやがった!!」

俺の席の金を見て言ってきた。

――――ふっ、生来のケチを舐めるなよ。

城への道を行く俺は、道中にラテナに会った。いや、遭った。

「スッチル~、これ買っちゃった。はい、持ってて」

ラテナはバタフライの形をした銀のペンダントを俺のバッグに突っ込んだ。

また、シルには干し肉、ルドには魔導書をバッグに突っ込まれた。

お前ら、俺のバッグを、どこぞの猫型ロボットのポケットとは、違うぞ。

まあ、何を隠そうこのバッグ。特別仕様になっていて、あながち例のポケットでも、間違ってないというか、むしろそのものというか。

100キロの荷物までなら半重力装置が働き、重さが無くなる。バッグの中には一坪文の別世界が広がっており、大体のものなら楽々入る。

うん、そっくりだ。

と、気づいたら、城門の前だった。

門前にいた兵士に、

「スチルキャラバンのキャプテン。スチルだ。この町で3日前に起きた事について詳しく話を聞くためにやってきた」

と、言うと

「えっ? スチルって言うとあのスチルさんですか?
 古来から職業序列の上位に並びかつては魔族をも退けたと言われる稀少職――て……」

「そこまでにしてくれ。早く中に頼む」

「あっと、これは失礼しました。今、王から許可が降りましたので、こちらにどうぞ」

「ああ、ありがとう」
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