鉄は熱いうちに撃て!?
「よくいらっしゃっただろう。 
 そんなに堅くならなくていいだろうから、頭を上げるだろう。
 で、用件は何だろう?」

片膝をついて待機していた俺は、跳ねるように顔をあげた。

「あっ、と。おっ、お忙しいところすみません。国王。
 ……早速本題に入らせていただきますが、先日の異音と――――壁の傷跡
 あれに、少し心当たりがあったもので今回参りました」

「頬にあざがついて、涎の跡が見えるだろう。おぬし寝ておったな。

 ……まあ、いいだろう。
 
――――あの事件に心当たりがあると言っただろう?
 どういうことだろう?」

「七蘭が一人――――『狼食のレンディオ』
 王なら、もちろんご存じでしょう。
 今回の件、そいつが絡んでる可能性が高いかと」

「『狼食のレンディオ』!? 
 確かに名前は知っているだろうが、確かあいつは肆島の担当のはずであるだろう」

「はい、肆島の担当……のはず、ですが。
 あの傷跡は間違いないかと思われます」

「本当に間違いはないのだろう」

「はい、以前一回、本物の技を目にしたのですが、それと酷似していました」

「そうなのか…… どうしたもだろうかの」

「どうしたもこうしたも、失礼ながら、国王様の目は底の空いた矢筒でございますか?」

「――――なによあんた!!クビよクビ!クビクビクビ!!絶対クビなんだからね!
 ……ってコホン。やけにタイムリーな話題を振ってくるだろう、家臣が10メートルくらい引く突っ込みをしてしまっただろう」 
 
「すみません、つい調子に乗ってメガネまでかけてしまいました。
 お詫びと言っては何ですが、その案件、私に任せてはもらいませんでしょうか」 

「……いいのか?己の命が危険にさらされるとしてもか?」

「それくらい、覚悟しています」

「冒険者の道を選んだからには、か?」

「いえ、男として産み落とされたからには、です」

王は目をそらし少し泳がせていたが、さすが王、早い決断は良い王の証だ。

「――――よし、任せてみようか」

「誠にありがたき幸せ、では今晩にでも」

俺は来た道を引き返す。

「……それと、国王」

「ん?なんじゃ、報酬か?」

「いえ、報酬なら一晩の宴会で結構です。それよりも国王、口癖を忘れてますよ」

「んっ、あ、そうじゃったな。いや、そうだっただろう。

……では、幸運を祈ってるだろう。稀少職業『鉄師』が一人スチルよ」

俺は、後ろに向かい、払うように手を振った。
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