鉄は熱いうちに撃て!?
「いらっしゃいなんだな」
店主がいつもの通りの挨拶をすると、

一番前のリーダーっぽいやつが答えた

「うるせーんだょデブが、いいから早く飯を出せ」

やけに口の悪いやつだ。
と、他の冒険者も思ったか一瞬振り向くが、これくらいのやつは、日常茶飯事なので、すぐ自分達の話に戻る。

店主も、
「早く出すにもなにも、何をつくればいいかわからないんだな。メニューを教えてほしいんだな」

……大人の対応をする。

「メニュー!?んなもんめんどくせえから、この、当店自慢骨つきを全部くれ、全部」

「おっと、ごめんなんだな。全部だと、他のお客様の分もあるから、出せないんだな」

「うるせぇ、いいから全部だよ、全部」
たいしょ…否、シェフが困った顔をしていると、

シャッ

シルが動いた。腰に刺さっている剣が全く動かなかった事からも、その早さが読み取れる。
 ほとんど音を立てずに、この男の前まで来ると、

男は、十五そこそこの年齢だろう女の子が、いきなり前に来てたじろいたが

シルはそんなものも見ずに、淡々と、だが透き通る声で、はっきりと言った。

「あなたが、全部持っていくと、他の人が迷惑、だからやめてほしい。」

あいつが珍しく、長く、しかも自分から話している。だが、この不良野郎は

「うるせえなガキは、静かにしてな。俺は戦士だぞ、なめると死ぬぜ」

不良野郎が自分の剣を振り上げる。

「結局は武力行使か」

シルが小さくぼやくと、自分の腰にある剣の一本を握り、技名を唱え、剣を出した。否、他の奴等には、出しただけのようにしか、見えないが、剣は、もう振ったのだ。

「独奏 一本桜」

一迅の風が吹いたかと思うと、不良野郎の剣が根元から、

……カキン、と切れた。

でた、シルの固有特性「破界」
「独奏 一本桜」(どくそう いっぽんざくら)
は、右腰にある腿まである剣の内、一番上の剣を使い、渾身の居合を一線、当てる技だ。

技を受けた不良野郎は、自分の剣を見て、あんぐりと口を開けていた。
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