結婚白書Ⅳ 【風のプリズム】


熱心に話をする実咲の腕を引っ張った

ダメダメ 病人はおとなしくして なんて口では言いながら 嫌そうではない

顔にキスをした


こうして実咲に触れるのは何日ぶりだろう

いつもそばにいて 会いたいときに会って 抱き合いたいときに抱き合って 

そうでないときは 実咲の髪に触れながらテレビを観たり 互いに興味のある

時代の話をしたりと それが当たり前だと思っていた


実咲が 母のことを感じ良く話してくれたのは嬉しかったが

自分の母親を褒められたくすぐったさがあり 照れを隠したくて 

彼女の体を乱暴に抱きしめた



「苦しいよ 少し力を抜いて」


「ヤダ 久しぶりだし」


「久しぶりって まさか ねぇ ちょっとダメよ 葉月ちゃん帰ってくるのよ」


「まだ2時だからヘーキ」


「平気って……」



彼女の抵抗もそこまでで シャツをたくし上げ 胸にキスをしていくと 

小さく艶のある息が聞こえてきた

僕の肩を掴んでいた手は 力が抜けたように滑り落ち 畳の上を彷徨っている

その手に左手を重ね 右手でジーンズのホックをはずし中へ忍び込ませると

熱を帯び湿り気のある声が漏れてき 僕の脳は抑制機能が効かなくなってきた



「やっぱりダメ 私 落ち着かない……」


「俺は落ち着いてる」


「私が嫌なの 男って どうしてそう無神経なの」


「無神経でいい」


「賢吾!」



実咲の本気の怒りの声がしてきて やむなくそこでストップ……

なんとも情けない格好のまま 無言で服を直していった


親父の家で彼女と……なんて やっぱりダメだよなぁ

そう言いながら胸に手を滑らせると ピシャリと叩かれ 当たり前でしょうと 

実咲にまた怒られた


起き上がった実咲に睨まれたが キスだけならいいだろうと妥協案を提示すると

それならいいけど……と 自分から僕の首に手を回してくれた

昼下がり かなり甘い味のするキスだった




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