結婚白書Ⅳ 【風のプリズム】


「朋代さんが 葉月を見て昔の自分を見ているようだって 

親に許してもらえない寂しさや辛さは 

自分が良く知っているからって そう言ってた」


「私たちの時とは違う」


「そうだろうけど お父さんだっておじいさんに許してもらったじゃないか 

二宮君だって真剣だと思うよ 

彼 ご両親に許しをもらうまで通い続けるって……

それを聞いて朋代さんが笑ってた お父さんと一緒だってね」


「あぁ 同じ職場にいるんだ 彼の性格はわかっている 

真面目な男だ ただ……」


「ただ 理屈じゃないってこと? あぁ 葉月かぁ 

あの態度じゃそうだよなぁ」



口元が崩れ ふっと笑いがでた


 
「僕と葉月は違うよ アイツ 誰かに似て頑固だから家を飛び出しかねないよ」


「私に似て頑固か」


「朋代さんにも似てる だって反対されても 

二人とも思いを貫き通したんだから」



しばし黙り込んだ父は 一点を見据えたままじっとして 何かを考え込んでいる


書斎のドアをノックする音が聞こえて 葉月ですと声がした

お父さん……そう言って入ってきたものの立ったままで その腕には

一冊のアルバムが抱えられていた

聞いてほしいことがあったのに ここにきたら上手くしゃべれなくなったと

口ごもる葉月に ゆっくり話を聞くから落ち着きなさいと 父は葉月を椅子に

座らせた

これからのことを話し合ってくるという二人に 朋代さんがアルバムを見せて 

葉月は自分たちが待ちに待った子どもだったのだと言ったそうだ

受け取ったアルバムには 生まれた頃の葉月と父や朋代さんの姿があった

僕の顔もあちこちに貼られていて面映い気分がした



「なかなか子どもに恵まれなくて ようやく授かったとき 

お父さんがどれほど喜んだか話してくれた……」


「お母さんは 自分が子どもを持つことを諦めようと思った時期があった」


「どうして 私を産まないつもりだったの?」


「いや そういうことじゃない 

お母さんと結婚する前に 私には子どもがいたからね 

その子を気遣ったんだ」



賢吾もここにいることだ 良い機会だから話しをすると僕の方を見て

そう前置きしてから話を手繰っていった




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