いつか、この想いを。


「……狩野、唯、か?」



不意に誰かに話し掛けられた。



「っ!?」



びっくりしてキョロキョロと辺りを見回す。



すると、教室の戸口に男の人が立っていた。


男の人、というかその人は、



「………櫻井先生……。」



英語の櫻井先生だった。



「このハンカチ、狩野のだろう?」



そう言って先生が手に持っているものをヒラヒラと見せた。



「…あっ!」



それはまさしく、私がさっきまで必死になって捜していたものだった。



「──っそう!ソレです!」



急いで先生の方へ駆け寄ると、先生はハンカチを差し出した。



それを受け取ると同時に、私の心は安堵に満たされる。



「よかったぁ…! コレ、私にとってすっごく大事なハンカチなんです。

わざわざ届けていただいて、ありがとうございます。」



やっと手元に戻ってきたハンカチを握りしめ、櫻井先生に向かって深々と頭を下げた。
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