いつか、この想いを。
「でもよく判りましたね。私のだって…。」



頭を上げてそう言うと、先生はああ、と言って目許を和ませた。



「さっきおまえが廊下走ってた時すれ違って。

その時、落としてったぞ、ソレ。」



ああ成る程。



そういえば今朝は走って教室に入ったっけ。



「…でもだからって、よく私の名前判りましたね。」


「………」



すると先生はしばらく私を凝視して、それからハァー…と溜め息をついた。



「…?」



怪訝に思って先生の顔を覗き込む。



「…あのな。俺だって生徒の名前くらい知ってるよ。さすがに全員ではないけど。

でも自分が授業やってるクラスの生徒のは、ある程度把握してるつもり。」



先生は苦笑してそう言った。
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