もっと美味しい時間  

エッチしないって言ってるのに、どうしてそう悩ましい触り方をするんだろう。
官能が刺激されて、心が穏やかでない。
思わず足を開いてしまいそうな自分の気持ちにブレーキをかけると、慶太郎さんにもブレーキをかけるため、手の甲をぎゅっと抓った。

「イッテーッ!!」

そりゃ痛いよね、おもいっきり抓ったから。

「慶太郎さん、さっき言ったこと訂正する。キスもエッチなことも全部禁止」

「エッチなこともって、俺、今エッチなことしたか?」

「太腿触った……」

頬を膨らませて、怒ってみせる。

「擦っただけだろっ。何? あんだけで感じたとか?」

「あ……」

しまった……。墓穴を掘った。
本当のことだけに、言い返す言葉が見つからない。

「そっかぁ、図星かぁ~」

そうよっ、その通りだよっ。
だからって、そんな言い方しなくてもいいじゃないっ!
元はといえば、慶太郎さん、あなたが悪いんだからっ!!
無性に腹が立って振り返ると、慶太郎さんの首に手をかけた。

「それ以上言ったら首締める」

もちろん本気じゃない。でも少しずつ力を入れると、慶太郎さんが何かを思い出したようにフフッと笑った。

「なぁ百花。前にもこんなことあったな」

「前にも?」

「覚えてない?」

そう言われて、慶太郎さんとの思い出を頭の中で辿っていく。


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