もっと美味しい時間
「……ったく、俺を殺す気かよっ!」
「殺すんだったら、もうとっくに殺してる」
脱衣場で、何とも物騒な会話だ。
お風呂から出て、Tシャツにスウェットパンツを穿いた慶太郎さんが、バスタオルで髪を乾かしながら文句を言っている。。
少しばかり長く、お湯の中に沈めすぎたかな……。
ギブアップと水面をバシャバシャ叩く姿を思い出し、フフッと笑い声が漏れてしまう。
「案外、冷酷な女だったんだな」
「それは、慶太郎さん次第」
今の私は強気だ。
いきなりの事だったから着替えの用意を脱衣場に持ってきてなかった私は、バスタオルをキツく巻き寝室へと急いだ。
大きなバッグから下着とルームウェアを取り出すと、それらをパパっと身につけた。
ピンク色でレースが付いたルームウェアは、最近一番のお気に入りだ。
姿鏡でモデル並みにポーズを付けて立っていると、慶太郎さんの声がした。
「何か飲む?」
寝室の入り口から、ニヤニヤとした顔を覗かせている。
その顔は、見てたよね……。
「百花、それ似合うじゃん。パンツが見えそうで見えない感じがいいな」
はぁ……慶太郎さんが、急におじさんに見えてきた。
「下にちゃんと短パン穿いてるから……」
バサッと上を捲って見せてやると、「なんだ、つまんない」と言って行ってしまった。
この期に及んで、まだ何かするつもり?
もう一度溜め息をつくと、身なりを直してキッチンへと向かった。