もっと美味しい時間
記念日ア・ラ・モード
結局あの後、京介が戻ってきたのは一時間も経ってから。
「何してたの?」と聞いても、「何でもない」の一点張り。
慶太郎さん曰く、「若月に電話してたんだろう」って事らしいんだけど。
でもそれならそれで、美和先輩のことが心配だし……。
だって相手は、あの京介だよ? 大丈夫?
なんて、美和先輩は私なんかよりずっとしっかりしているし、心配するすることじゃないかもしれないんだけど。
そんなこんなで、春さんのお店でお腹いっぱい食べると、帰宅の途についた。
マンションに入って京介と別れると、部屋へと急ぐ。
「百花。明日の朝は早く出るからな」
「そうなの? で、何時頃?」
「そうだなぁ、昼までには到着したいから、休憩時間を入れると……6時か」
「ごめん、慶太郎さん。慶太郎さんの実家って、大阪じゃないの?」
「あれ、言ってなかったっけ? 広島だよ」
「広島~っ!?」
聞いてない聞いてないっ!!
大学が大阪だから、てっきり大阪かと……。
喋りも全然訛りがないから、何でかなぁとは思ってたけど。
な、なんか急に緊張してきたよ。
慶太郎さんの実家に行くことは、何も今日決まったことじゃないのに、どうしちゃったんだろう。
何故だか、慶太郎さんの実家が大阪じゃなく広島と聞いただけで、やけに現実味を帯びてきてしまった。
「ねぇ。ご両親には、ちゃんと私のこと話してくれてる?」
「どうだったっけなぁ……。いい年の男が彼女連れて行くんだ。どういうことかくらい分かってるだろう」
呆れた。仕事では用意周到の慶太郎さんも、自分のこととなると形無しだ。
と言うか、もうちょっと私の身になってくれてもいいと思うんだけど……。