もっと美味しい時間
※慶太郎と京介
百花に見送られドアを閉めると、すぐに携帯へと手を伸ばす。
「京介のやつ、百花に何したんだっ」
鼻息も荒く、あいつの携帯に電話を掛けた。
『慶太郎、何やってんだよ。早く来いよ』
「京介っ! お前、どこで百花に会ったっ!!」
『あぁ、その話。百花ちゃん、話しちゃったんだ』
「百花ちゃんって……。京介っ、そこで待ってろよっ!!」
『だから、さっきからずっと待ってるって。何言ってんだよ、お前……』
京介の、人を小馬鹿にしたような口調にイラッとして、ブチッと電話を切る。
まったく……。あいつに関わると、ろくなことがない。
大学時代からそうだ。
俺とあいつ、櫻井京介が知り合ったのは、大学のゼミでだった。
そこで特に目立っていたのが京介だ。
今で言う“チャラ男”だった京介は、ゼミの仲間とすぐに打ち解けた。
今でこそ、人と上手くコミュニケーションがとれている俺も、その頃は人付き合いが大の苦手。なかなか仲間に入れない俺を見かねた京介が、みんなとの仲を取り持ってくれた。
そのことがキッカケで仲が良くなり、休日も一緒に過ごすことが多くなった。
恥ずかしい話だが、その頃の俺は女性にも奥手で、ゼミの中に好きな子が出来た時も京介に協力してもらった。
まぁ俺の女性遍歴については殆どあいつに知られていて、今では俺の汚点の一つになっているといっても過言じゃない。
だからか、あいつには頭が上がらないというか、弱い。
またそのことを今でも遠まわしに使ってくるもんだから、鬱陶しい事この上ない。