もっと美味しい時間
外に出ると、爽やかな空気に深呼吸する。
夜は気づかなかったけれど、目の前は公園になっていて、奥の方には池も見えた。結構大きな公園みたい。こんな日は、慶太郎さんと散歩でもしたかったなぁ~と、今更言ってもしょうがないことを頭の中で呟いてみる。
公園を横目に歩き出すと、隣にも慶太郎さんが住んでいるマンションと似たものが、もう一棟建っていた。
マンションの入口を見てみると、同じマンションの二号館らしい。
「すっごいマンションだよね」
小さく呟くと、そこから綺麗な女性が出てきた。
女の私でも息を呑むほどの美しさ。漆黒の髪がその女性の美しさを際立たせている。背もスラっと高く、できる女と言う感じだ。私なんかが横に並んだら、『月とスッポンだな』と言われかねない。
同じ方向へ向かうらしいその女性から、少し距離を開けて歩く。道行く人に比較されるのはごめんだからね。
手にした地図を見ると、スーパーはもうすぐのようだ。今日は迷わなかったと、ホッとしていると鞄の中から着信音が聞こえた。
「慶太郎さんだっ」
急いで携帯を手に取る。
「慶太郎さんっ!」
人目も気にせず大きな声を出してしまい、前を歩いていた女性が立ち止まり、振り返った。大きな声を出し過ぎたと、慌てて頭を下げる。するとその女性はニコッと優しく笑い、また歩き出した。