もっと美味しい時間
「京介、ちょっと落ち着け。この手を離してくれないか?」
「逃げるんじゃないだろうな?」
「そんなことするわけ無いだろっ! 俺の話も聞けよっ!!」
俺の何度目かの訴えが通じたのか、京介が胸元を掴んでいた手をやっと離した。
苦しくなっていた息を大きく深呼吸して整えると、後ろを振り返る。
「おいっ明日香っ。ちょっと来いっ!」
「明日香って……」
京介がやっぱりかと言うような顔をすると、俺の後ろを覗き込む。
「何よ、お兄ちゃん?」
嫌々仕方なくといった様子で、明日香がその場にやってきた。
その顔は何を言われるのか分かっているのか、俺とは目を合わせようとしない。
「お前、明日香ちゃんと風呂に入ってたのか?」
人を蔑んだような目で見る京介。
そんなこと、あり得ないだろ……。
「そんな訳ないだろ。バカも休み休み言え」
「だったら……」
「だからちょっと待てって言ってんだよ。兎に角ここじゃなんだ。中に入れ。明日香、お前もだ」
京介はやれやれといった感じで、明日香は渋々俺について来た。
ソファーに明日香を座らせると、自分もテーブル挟んだ正面に座り、尋問さながらに明日香を問い詰める。
「お前、百花に会ったのか?」
「…………」
「反論しないってことは、肯定とみなしていいってことだよな?」
「勝手にしたら」
「百花に何を言った?」
「別に何も……」
このままでは埒が明きそうもない。