もっと美味しい時間  

「はぁ……。でも美和ちゃんがいてくれて、本当に助かったよ」

「そう? 私は何もしてないけど?」

「傍にいてくれるっていうだけで、私には心強いもんなのっ」

「そう言うことは課長に言わなきゃね」

「それはそうなんだけど……」

さすがに今回は明日香さんのこととあって、なかなか慶太郎さんには相談しにくいというか、話しにくい。
傍にいるのも何となくぎこちなくなってしまって……。

慶太郎さんは『明日香のことは気にするな』と言ってくれるけど、気にせずにはいられない。
このままじゃ私の気持ちが落ち着かなくて、結婚に向けての話しが進まないし。

「今週は美和ちゃんがいてくれるからいいけど、来週からはひとりかと思うと気が重いなぁ」

「何言ってんの! ラブラブな新婚生活が待ってるんでしょ?」

「新婚じゃないけど、そんな気分じゃなくなっちゃったよ。早く働くところ探さなくちゃ」

「ほんとに働くの? 課長は働かなくてもいいって言ってるんでしょ?」

「うん……」

会社も辞めたばかりだし、しばらくは好きなことをしながら俺の世話をしてくれればいいよなんて、慶太郎さんは勝手なことを言ってるけれど、私の趣味なんて食べることと作ることしか無いんだもん。
一日中作って食べてたら、また太っちゃうじゃない……。

やっぱり昼間は少しくらい身体を動かすことをして、ちょっとくらいは稼ぎたい。


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