もっと美味しい時間
マンションに戻ると買ってきたパンと温めなおしたスープでランチを済ませ、引越しの荷物の片付けを再開した。
くだらない話をしながらの作業はなかなか進まなかったけれど、それほど多くないダンボール箱の荷物は、夕方までにほぼ片付け終わった。
そして部屋に壁に掛かっている時計が五時を知らせると、美和先輩が立ち上がった。
「さてと、後は衣類の片付けだね。また明日来るよ」
バッグを持つと顔をニヤつかせて、リビングから出て行こうとする美和先輩。
ちょっとソワソワしてる感じ?
「美和ちゃん、この後何か良いことでもあるの?」
そう。きっと何かあるに違いない。
私も立ち上がり美和先輩の顔を覗きこむと、いつもの先輩らしからぬモジモジした態度をした。
「え、えっとさ……。京介さんが、私の手料理が食べたいって言うから、ちょっと買い出しに行こうかと……」
照れくさいのか、顔が真っ赤なんですけど!
もう美和先輩ったら、可愛いっ!!
ならいつまでも、ここに縛り付けておくわけにはいかない。
美和先輩の背中を押しながら玄関まで連れて行くと、背中側から先輩をギュっと抱きしめた。
「やっぱり美和ちゃんも女なのね。安心した。京介にいっぱい愛されてね」
私のその言葉を聞いて身体をビクッとさせると、荒っぽく私の腕を解いた。
そして振り向いた顔は、さっきよりも赤くなっていて……。
「百花のくせに生意気!」
私の鼻をグイッと摘むと、優しい笑顔を残して玄関から出て行った。