もっと美味しい時間  

「何か変なものでも食べたかなぁ……」

結局朝になっても体調は良くならず、それどころか気持ち悪さまでも加わってしまっていた。
熱を計れば、36.9度。
普段の平熱が35度台の私にしてみれば、ちょっとした微熱といったところか。

「しんどいなぁ~」

もしこれが普段の金曜日だったら『小麦の風』に電話して、休ませてもらっていたかもしれない。
でも今週は特売セール中で、猫の手も借りたいほどの忙しさだった。

「今日頑張れば明日は休みだし……」

そう言ってソファーから立ち上がると、冷蔵庫に向かう。
そして中から栄養ドリンクを取り出すと、腰に手を当てて一気にそれを飲み干した。

「慶太郎さんの顔が見れないから、元気出ないのかな……。なんてね」

身体の調子が悪いのも慶太郎さんにギュっと抱きしめてもらえば、すぐに治っちゃうのに。
でも帰ってくるのは明日なんだよなぁ。早く明日にならないかなぁ。

なんて、しんみりした気持ちで壁にもたれていると、栄養ドリンクのお陰なのか少し気分が良くなってきた。

そして気持ちを奮い起こすと寝室に向かい素早く着替え、シュシュで髪を一つに束ねると姿見の前に立った。

「ヒドい顔」

それでも何とか笑顔を作ると、パンっと両頬を叩いて気合を入れる。そしてバッグ片手に玄関に向かうと、勢い良くドアを開けた。





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