もっと美味しい時間
「慶太郎さん、怒るよ?」
怖い顔をして見せると、盛大に笑いながら私に近づいた。
「百花が怒っても、全然怖くないし。それに間違えだったとしても、それはそれで結果OKだしな」
「どういう意味?」
「とにかく、百花がいいって言ってんのっ。お前じゃなきゃダメなのっ。分ったか?」
自分で言い出したくせに照れてるのか顔を赤くしてそう言うと、水華さんがいるというのに私を抱きしめ、キスをした。
「バカ。水華さんが見てるじゃない……」
「いいんだよ。邦男には俺たちがラブラブなのを見せつけておかないとな」
「はいはい、分かりましたよ。お熱いことで」
そう言って水華さんが笑い出すと、私と慶太郎さんも一緒に笑った。
そこに新(あらた)を抱いた明日香さんと、緑(みどり)抱いた美和先輩が現れた。
「百花さん。新緑のオムツ、そろそろ替えたほうがいいんじゃない?」
明日香さんがそう言えば、
「百花。新緑、ミルクの時間でしょ?」
と美和先輩が時計を見る。
生まれた赤ちゃんは、男の子と女の子だった。
すると慶太郎さんはすぐに、「名前は新緑にする」と言い出した。
私の両親に結婚の挨拶に行った時の、山の新緑が目に焼き付いて離れなかったらしい。
いつか子供が出来たら、それにまつわる名前が付けたかったと。
で、双子だったから『新緑』がいいって。
私ももちろん、一発返事でOKを出した。