もっと美味しい時間
新を私が、緑を慶太郎さんが抱くと、腕の中でふぎゃふぎゃ泣きだした。
「オムツも替えなきゃだし、これは完璧にお腹空いてるよね」
柔らかい頬を指でつつき、口の近くに移動させれば、その指を吸おうと口を開けた。
「可愛い……」
「だな」
優しい声で囁く慶太郎さんの顔を見ると、溢れそうな笑みが広がっていた。
「じゃあ私たちはレストランで飲んで待ってるから、ごゆっくりどうぞ。終わったら4人で来なさいね。それがお式のスタートよ」
水華さんの気遣いが、素直に嬉しい。口は悪いし、時々訳のわからないことをする水華さんだけど、やっぱり私たちのことを愛してくれているのがよく分かる。
「邦男、サンキュー」
慶太郎さんがそう言うと、
「邦男じゃないって言ってんだろっ!!」
と憤慨しながら出て行った水華さん。
いやいや、十分邦男だし……。
でも今頃、レストランで飲みながら笑ってるんだろう。彼女はそういう人だ。
慶太郎さんと顔を見合わせて笑っていると、明日香さんと美和先輩がそばにきた。
「新緑の面倒、私見るよ」
明日香さんが声を掛けてくれる。
明日香さんとはいろいろあったけれど、私が妊娠したのを機に仲良くなった。と言っても明日香さん曰く『最初から嫌ってた訳じゃない』らしい。
よく大阪に来ては、新緑の面倒を見てくれる。今となっては昔のことなんて、どうでもいいことだ。