もっと美味しい時間  
番外編

京介と美和の甘い一日


慶太郎にも困ったもんだ。

百花と結婚するって決めたのなら、妹の一人くらい自分でどうにかしろってんだ
っ。

仕事だと抜かりがない奴なのに、恋愛事の詰めの甘さには、相変わらず手間を掛けさせられる。

憤慨気味に同じマンション内の自宅まで歩いていると、きゅっきゅっと服の袖を掴まれた。

「京介さん、ごめんなさい」

その声に振り返ると、美和が申し訳なさそうに立っていた。

「なんで美和さんが謝るんですか? 悪いのは慶太郎と百花だ」

「その百花の勘違いが事の始まりだから……」

見た目は冷たそうな感じがする彼女の、そのしおらしい態度が俺の心を揺さぶる。

これは俺を落とすための芝居か?

ついいつもの癖で、そんなことを考えてしまう。
美和がそんな女じゃないことを、よく分かっているくせに……。

「こんなとこで立ち話も何だし、その件は部屋に入ってからゆっくり話そう」

美和の肩を抱くと部屋に向かい、二人一緒に歩き出した。
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