もっと美味しい時間
美和は少し驚いたような表情を見せると、すぐに笑顔に戻しゆっくり口を開いた。
「どっちの私も本当の私ですよ。京介さん? あなただって、私の前では紳士で言葉遣いが違うじゃないですか? どうして?」
「そ、それは……」
痛いところを突かれて、どう答えたものかと口淀んでしまう。
確かに俺も、美和の前ではいつもの俺じゃないのかもしれない。
でもそれはそうだろう。
好きになりかけてる女の前で、いつもの口の悪い俺を見せられるか?
まぁ百花の前で暴言吐く姿を見られているから、今更というような気もするが……。
それでも美和の前では、いい男でありたかった。
うん? 好きになりかけてる女? いい男でありたい?
そうかっ!! そういうことだったのかっ!!
「美和さん、もしかして……」
「分かってくれた? 私だって一応女なんです。別に作ってたわけじゃなくて、京介さんの前だと、二人きりになると、女っぽくなってしまうというか……」
照れたように笑う美和が可愛すぎて、俺の中にある何かがプツッと切れた。