もっと美味しい時間
こんなにも愛してもらっているのに、私がちゃんと応えなくてどうするのっ!!
慶太郎さんを愛してるなら不安不安とばかり言ってないで、もっと自分に強くならなきゃ。
じゃなきゃ綾乃さんに、気持ちで負けてしまう。
仕事も女もスキルアップするって決めたんだし、これはちょうどいいチャンスかもっ!?
慶太郎さんを信じて強くなろうっ!!
心の中で自分を叱咤すると、慶太郎さんから身体を離し手を握った。
「慶太郎さん、私頑張るっ。自分のためにも慶太郎さんのためにも、もっと強くなるっ!!」
手を引っ張り歩き出すと、慶太郎さんも歩き出す。
しっかりとした歩みに私の決心を示すと、最初は渋々着いてきていた慶太郎さんが、私の歩調に合わせ始めた。
隣を歩く慶太郎さんの顔を見る。
「まだ完璧に不安がなくなったわけじゃないけど、今の自分なら大丈夫な気がする。慶太郎さんの“愛してる”の一言は無敵だよ」
「じゃあ、その無敵の言葉を俺も百花から欲しいんだけど?」
「えっ!?」
言い慣れてない言葉に、一瞬戸惑ってしまう。
「なんだよ、百花は俺を愛してないんだ……」
繋いでいた手を離すと、私を置いて先に行ってしまう。
後ろ姿を目で追っていると、次の角を曲がり慶太郎さんが見えなくなった。
愛してるに決まってるのにっ!!
でもそれが言えなくて怒らせてしまったのは私だ。
大急ぎで走りだし、慶太郎さんの後を追う。勢い良く次の角を曲がると、ドンッと何かにぶつかった。
「きゃっ!!」
「おっとっ!! 何そんなに焦って走ってるの?」
「慶太郎さんっ!! ごめんね、愛してるってすぐに言えなくて、ごめんね……」
感極まって、涙が出てきてしまった。
私を抱きとめたままの慶太郎さんが、優しく背中を撫でてくれる。背中がほんわか温かくなると、そこから慶太郎さんの愛情が全身に伝わっていった。