もっと美味しい時間  

「おいっ、そこのボーっとしてる女っ!!」

えっ?  そんな人、どこにいるんだ?
キョロキョロしている私の頭を、持っていた雑誌で叩く。

「痛いっ!! 何するのよ京介っ!!」

「お前のこと言ってんだよっ!  それに今度は呼び捨てかよ」

「京介なんて、京介で十分でしょっ!!」

怒りプンプン憤慨しまくっている横で、美和先輩と京介は穏やかに話しだす。

「すみません、この子、時々変なんですよ」

「いやいや、よく知ってますよ。まだ一回しか会ってないですけどね」

息の合った二人が、笑いながら話している。私の存在なんて、何処かに行っちゃってるよね?
そうですか、そうですか。二人仲良くよろしくやってて下さいよっ。
フンっと二人を横目に通りすぎようとすると、京介に腕を掴まれた。

「お前ひとりで行ってどうすんだよ」

あっ……そうでした。
それにしても、私に対する乱暴な言葉が鼻持ちならない。
やっぱり私と京介は合わないらしい。
でも今日は我慢してやろう。

「美和先輩、じゃあ行ってきます」

「うん、頑張っておいで。良い連絡、待ってる。櫻井さん、百花をよろしくお願いします」

「はい、お任せ下さい。あっ、若月さん。今度は是非、お食事でも」

私の前で口説くなっ!!

「そうですね、是非」

先輩、満更でもなさそうなようす?
でも先輩には、彼氏がいたと思うんだけど……。
にこやかに手を振ってる先輩に手を振り返し、会社を後にした。

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