もっと美味しい時間  


「京介、これって……」

「何?」

たった今、京介と新幹線に乗り込んだんだけど……。

「これ、グリーン車だよね?」

「あぁ、グリーン車以外の何ものでもないな」

さも当たり前のように言い捨てる。
そんな簡単に……。
グリーン車って高いんだよね? 私に払えるような金額?

「京介、この支払いって……」

「ちゃんと払ってもらうぞ」

やっぱり……。

「慶太郎に」

「へ? 慶太郎さんに?」

「そう。百花ちゃんには払えないでしょ?」

子供扱いする時は、ちゃん呼ばわりなのね。
でも、いいのかなぁ。慶太郎さんに支払わせちゃって……。
すると、心の中の悪が顔を出す。

(いいじゃないか。今日はアイツのせいで大阪まで行くんだろう?)

そ、そうだよね? 元はと言えば、慶太郎さんが悪いんだし……。
うんうんとひとり納得して頷くと、それを見ていた京介がプっと吹き出した。

「やっぱりあんたは面白い。オモチャとして、そばに置いておきたくなるな」

「オモチャ……。そこは恋人とか、他に言いようはないわけ?」

「恋人っ!? ありえん。若月さんなら、話は別だけど」

「美和先輩はダメっ!! 彼氏いるし」

「それが何か関係ある?」

関係あるでしょっ!! 何考えてるのっ!?
全く、綾乃さんといい京介といい、慶太郎さんの回りにいる人は、何で人の恋路を邪魔するようなことするのかなぁ……。
はぁぁ~、先が思いやられるよ。




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