もっと美味しい時間  

席に案内されると、メニューを開ける。
甘いもの、甘いもの……。
何を頼むか真剣に考えていると、メニュー右上『当店自慢』の文字が目に入った。

「フルーツ・パフェ……かぁ」

自分でもよく作るけれど、自慢って言うくらいだから期待できるよね。
ふぅ~と一呼吸すると、あきさんに向かって叫ぶ。

「フルーツ・パフェ下さーいっ!!」

「お前、声でか過ぎ」

呆れ顔で京介に怒られたけれど、そんなの今はどうでもいい。
知らんぷりをすると、カウンターの中から笑い声が聞こえてきた。

「まぁまぁ、いいじゃない京さん。フルーツ・パフェね。京さんはコーヒーでいい?」

「はい、いつものモカで」

丁寧に答える京介を見て、少し反省する。
私ももう24だ。
もう少し大人らしさと言うものを、学ばないといけない。
こんなんだから、慶太郎さんにも京介にも、子供扱いされるんだよね。
チラッと京介を見ると、今度は経済新聞を読んでいた。
これは真似できそうにないけれど……。
大きな溜め息が出てしまう。

「何、溜め息ついてんの?」

「いや、いろいろ考えることがありまして……」

「考えても無駄でしょ」

相変わらずな態度で、怒る気も失せる。
でも今は、この後のことを考えたほうがいいかもしれない。何せ相手は、あの綾乃さんなんだから。
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