もっと美味しい時間
「な、何よ?」
「慶太郎と一緒のこと言うんだと思ってさ」
「慶太郎さんと一緒?」
確かに慶太郎さんは甘いものも好きで、プリンアラモードやパフェも大好きだけど……。外食に行って甘いモノを食べてるイメージがないんだよね。
だいたいいつも、コーヒーを頼んでいるような……。
なのに、慶太郎さんと一緒のこと言うって、どういうことだろう?
「慶太郎をここに初めて連れてきた時、フルーツパフェ頼んでさ。あいつがコーヒー以外のもの頼むの初めて見たから驚いたんだけど、そのときあいつ言ったんだよ、“食べるのがもったいない”ってさ」
「…………」
そうなんだ。
でもちょっと想像できるかも。
いつも私が作ったパフェや甘いデザートを、嬉しそうに眺めている姿を思い出す。いつまでもずっと見てるだけだから「食べないなら私食べちゃうよ」って言うと、「百花がせっかく作ってくれたのに、すぐには食べられない」ってまた眺めるんだよね。
「ふふっ」
思わず、思い出し笑いをしてしまう。
「何で笑ってる?」
京介が不思議そうに聞いてきた。
「ちょっと、うちでの慶太郎さんを思い出して」
急に慶太郎さんに会いたくなった。
今すぐ会って、ギュっと抱きしめて欲しくなってしまった。
でも今から会いに行く場所は、慶太郎さんと綾乃さんがいる。
それを思い出すと、一気に元気がなくなりまた不安が押し寄せてきた。
ゆっくりとスプーンを持つ手を動かしラズベリーを乗せると、口に運ぶ。
思いのほか酸味の効いた酸っぱさに、眉をひそめた。