もっと美味しい時間
「それで、俺に何か聞きたかったんだよな?」
そうだった。すっかり忘れていたよ。
でももう聞かなくてもいいかなぁ……。
どうしようか下を向いてイジイジしていたら、京介が珍しく優しい声を出した。
「なぁ百花ちゃん。今日はどうして大阪に来たんだ」
「それは……」
「あっちを出るとき、若月さんの前で頑張るって言ったのは嘘だったのか?」
「嘘じゃないっ! 今だって、頑張る気持ちは変わってないっ!!」
「なら下を向くな。ひとりで勝手に思い込んで悩んで落ち込むな。なぁ、俺のさっき言ったこと分かったか?」
さっき言ったこと? 何言ったっけ?
頭の中の記憶を、どこまで巻き戻せばいいんだ?
ひとり首を傾げていると、京介が口を開く。
「慶太郎がフルーツパフェ頼んだ時の話」
「うん」
「うんって……。あいつが、コーヒーしか注文しなかったあいつがフルーツパフェ頼んだんだぞ。しかも俺がいる前で。それが何を意味してるか、お前分かんないのか?」
何意味してるんだろう……。
好きだから……ってことじゃ、ないんだよね、きっと。
「まったく、どうしようもないな。いいか、一回しか言わないから、よーく聞いておけよ。気取り屋でいいカッコしいのあいつを変えたのは、百花、お前だって言うことっ!」
「私が慶太郎さんを変えた?」
「そう、いい意味でだ。ここまで言えば分かるだろう?」
「分かんない」
目の前で京介が大きくズッコける。
芸人みたいなリアクションに、ブブッと吹き出してしまった。
真面目そうな京介でも、こんなリアクションするんだと、ある意味感心してしまう。