もっと美味しい時間  
ビターチョコな試練

「車取ってくるから、ここで待ってろ」

あきさんの店を出ると京介にそう言われ、少しどんよりとした雲を眺めながら待っていた。

---私の心の中の天気みたい---

何も天気まで曇らなくてもいいのにね……。
恨めしい思いで空を見上げていると、クラクションが鳴り響いた。

「どこにいてもボーっとしてんのな」

車の窓が開くと、いきなり嫌味ですか。
でも顔は笑ってるね。ちょっと不気味なんだけど。
あはっ、私も結構毒舌?
くすくす笑いながら助手席に乗り込むと、車がゆっくりと進みだした。

「慶太郎たちも、会社に向かってるみたいだな。さっき秘書課に連絡が入ったらしい」

「そうなんだ……」

京介のお陰で落ち着きを取り戻していた心が、また忙しなくなり始めた。
もうすぐ慶太郎さんに会える喜びと、綾乃さんと対峙する不安……。その両方がぶつかり合って、胸が痛い。
京介は大丈夫、自信を持てと言ってくれたけど、大阪支社に近づけば近づくほど自分の気持ちに負けそうな自分が現れてしまう。
身体が震えだし、それを止めようと手をぎゅっと握り締める。

「大丈夫か?」

赤信号で停まった京介が、私の顔を覗き込んだ。


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